行政書士試験は、合格するのが難しいとされる国家資格の1つです。
しかし、受験資格がない(年齢、学歴、国籍等に関係なく、誰でも受験できる)ことや基準点を取れば合格できる絶対評価が採用されていることから、法律を初めて勉強する人でもチャレンジしやすい資格となっています。
本記事では、行政書士試験の難易度や勉強時間の目安、最短で合格するためのコツを解説していきます。
行政書士試験の難易度はどれくらい?
行政書士試験は範囲が広いので、「難しい」という人が多い傾向にあります。
難易度としては偏差値62前後、合格率は10%ほどといわれているので、難関資格であることは間違いありません。
では、行政書士の合格率は他の士業と比較するとどのくらいなのか、また、実際に合格することは可能なのか等、実情を見ていきましょう。
行政書士試験の合格率は10%前後!
行政書士講座の過去の合格率を見てみると、合格率が高い年で約16%、低い年で約8%前後となっており、過去10年間の平均合格率は約10%前後となります。
この結果から分かるように、行政書士の合格率は決して高いとは言えません。
では、ここで他の士業の試験の合格率と比較してみましょう。
★直近5年間の平均値(小数点以下は切り捨て)
※複数回試験(1次~2次試験又は1次~3次試験)がある司法書士・弁理士・弁護士(司法予備試験)の合格率は、一発合格の場合はもっと低くなります。
士業名 | 合格率 |
---|---|
行政書士 | 12% |
社会保険労務士 | 6% |
弁理士 | 7%※ |
司法書士 | 4%※ |
弁護士(司法予備試験) | 4%※ |
司法書士の4%、社労士の6%など、合格率がかなり低い資格もあるので、こうして比較してみると行政書士試験は難関国家資格の中では高い合格率となります。
しかし、合格率10%というのは、単純に100人受験しても90人が不合格になるということなので、合格するのにはそれなりの努力が必要になってきます。
難易度は高めだがしっかりと知識を身につければ合格は可能
行政書士試験は難易度こそ高いですが、誰でも受験することができる上に、法律を学んだことがなくても学習をしっかりと行い、知識を身につけてさえしまえば、合格することは充分可能となります。
行政書士試験の合格基準
行政書士試験は300点満点の試験となっており、300点中180点以上の点数を獲得できれば合格です。つまり、全体の6割以上の点数を取れば合格基準に達します。
しかし、6割以上の点数を獲得しても必ず合格できるということでもなく、6割以上の点数を獲得しても行政書士試験で不合格になる可能性もあります。
なぜならば行政書士試験は、「法令等科目」と「一般知識科目」の2科目あり、各科目で定められた点数以上を獲得し、合計で6割以上の点数を獲得しなければ合格することができないからです。
これは『足切り制度』と言われています。
科目ごとの合格基準は以下の通りです。
科目名 | 配点 | 合格点 |
---|---|---|
法令等科目 | 244点 | 122点 |
一般知識科目 | 56点 | 24点 |
上記の通り法令等科目で5割以上、一般知識科目で約4割以上の合格点が必要です。
つまり、法令等科目で満点を獲得しても、一般知識科目で約4割以下だった場合、不合格となってしまいます。
例外として試験問題の難易度があまりにも高かった場合に『救済措置』として合格点が下がることも稀にありますが、あくまでも例外です。
基本的に合格点が下がることはないので、しっかりと合格基準に達する学習をすることが大切です。
行政書士試験の勉強時間の目安は?
行政書士試験の勉強時間の目安は500時間〜800時間といわれており、他の資格と比べると以下のようになります。※各人の法学習熟度によりばらつきがあるのが特徴です。
試験名 | 勉強時間 |
---|---|
行政書士試験 | 500〜800時間 |
社会保険労務士試験 | 700~1,000時間 |
中小企業診断士 | 800~1,200時間 |
司法書士 | 3,000~3,500時間以上 |
弁護士 | 8,000~10,000時間以上 |
他の士業と比べてみると、行政書士試験に合格するために必要な勉強時間は比較的少ないことがわかります。
単純計算で1日2時間の勉強時間だと1年ほど繰り返す必要があるということになります。
ですが、1日2時間の勉強を繰り返し、行政書士の知識をしっかりと身につける勉強をしっかりと行いさえすれば、試験に合格できる可能性があるのです。
平均勉強時間が10,000時間の弁護士に比べると、行政書士試験はまだ取得が現実的な資格だと言えます。
1年前から準備を開始するのが一般的
行政書士試験に向けた勉強は、基本的に「1年前」から行うのが一般的です。
ただし、どのくらい前から試験準備を開始するかは、受験する人の勉強の習熟度によって変わってくるので多少の個人差はあります。
例えば、弁護士や公認会計士など、他の資格をすでに持っている場合や、法律の予備知識や勉強経験がある場合、全く知識のない人に比べると、勉強時間は短くて済みます。
また、1日にどのくらいの勉強時間が確保できるかによっても試験勉強の開始時期は変わってきます。
1日に勉強できる時間が少なければ少ないほど、勉強期間を長く設定する必要があります。
例えば1,000時間の勉強を1年間かけて行う場合、1日の勉強時間は、2.7時間前後となります。
一方で、もし1日5.5時間ほどの勉強時間を確保できるのであれば、半年で終わります。
このように、人によって勉強時間は代わりますし、どれぐらい前から勉強開始するのかもそれぞれ異なりますが、1年前ぐらいから勉強をし始めるのが一般的であると覚えておきましょう。
最短で行政書士試験に合格するための5つのコツ
難関資格と言われている行政書士試験は、それなりに勉強期間を設け、しっかりと知識をつけないと合格することができません。
ですが、ただ勉強するだけでなく行政書士試験に最短で合格するためのコツをしっかりと理解することも大切です。
行政書士試験に最短で合格するためのコツは全部で以下の5つです。
- 法令科目は民法と行政法に重点を置いて勉強する
- 一般知識科目は高得点を狙わず、基準点クリアを目標にする
- 過去問は積極的に取り組む
- 模試を受ける
- 資格の学校(予備校)を積極的に活用する
それぞれ詳しく解説していきます。
コツ1:法令科目は民法と行政法に重点を置いて勉強する
法令科目の内容は、民法・行政法・憲法・基礎法学・商法(会社法を含む)の5つの科目があり、合計点数は244点で122点以上の獲得で合格基準に達します。
ただし、闇雲になって試験範囲全てを理解しようとするのは非効率なので、『民法と行政法』に重きを置いて勉強するのが合格へのコツです。
仮に民法と行政法で満点を獲得すれば民法が76点、行政法が122点となり合計で188点を獲得することができるので、合格点である180点を超えることができます。また、法令科目の122/244点以上の足切りもクリアしています。
ただし、合格するためには一般知識科目でも合格基準をクリアする必要があるため注意が必要です。
しかし、まずは、合格得点をクリアして「法令科目」で足切りをされないことを目指すのが無難です。
法令科目の残りの「憲法・基礎法学・商法(会社法を含む)」は基礎的な問題を落とさないことを意識して、「民法と行政法」は何が出題されても大丈夫だ、くらいの気持ちで勉強することをオススメします。
コツ2:一般知識科目は高得点を狙わず、基準点クリアを目標にする
一般知識科目で高得点を狙うのは難易度が高いため、得点源とするのではなく、合格基準に達することを目標にするのが最短合格へのコツです。
一般知識科目の内容は、「経済・社会・政治」と「個人情報保護・情報通信、文章理解」の3つの科目があり、合計点数は56点で24点以上を獲得することで足切りをクリアします。
56点と聞くと範囲はそこまで広くないように感じますが、実は捉えどころのない科目かつ範囲が幅広く、1問あたりの配点割合が高いので、怖い科目でもあります。
要は法令科目の択一と同じ1問4点ですが、択一は一問あたりの割合が4点(1問あたり)÷160点(択一満点)=2.5%のところ、一般常識は一問あたりの割合が4点(1問あたり)÷56点(一般常識満点)=7.1%となり、1問を落とすことの重みが異なります。
とは言えども、そんな一般知識科目で満点を目指そうと思うと、全部覚えるまでに多くの時間がかかるので、合格基準となる24点以上を目指すのがポイントです。
具体的には次のとおりです。
経済・社会・政治と個人情報保護・情報通信、文章理解のうち、経済・社会・政治については膨大な範囲から出題されるので、基礎的な知識を優先して勉強します。そして、個人情報保護・情報通信、文章理解はある程度、範囲が絞れていたり、対策がしやすい部分なので、ここは何が出題されても大丈夫、くらいの気持ちで勉強する必要があります。
~学習優先度まとめ~
★法令科目>一般常識
★行政法>民法>憲法>会社法>基礎法学≧商法・・・法令科目
★個人情報保護・情報通信>文章理解>経済・社会・政治・・・一般常識
コツ3:過去問は積極的に取り組む
行政書士試験に合格するためには、まずは過去問をとにかくやり込むことが大切です。
なぜならば、敵に勝つ(本試験を突破)には敵を知らなければなりません。
そこで過去問演習をすることで「出題傾向や出題形式」を知ることができます。また、過去問演習をすることにより、自分にどの程度「知識が定着しているのか」を知ることができ、足りない部分を把握できるメリットがあります。
そのため、一通りの学習が終わってから過去問を解くのではなく、学習を始めた段階から同時進行で解いていくのがオススメです。※1科目は、章や節ごとにコマ切れにできます。
でも、こんな声が聞こえてきそうです。「まだ全然覚えてもいないのだから、意味ないのでは?」
大丈夫です。間違えていいんです。本試験で間違えなければ勝ちなんです。練習で沢山間違えて多くの学びを得てください。「覚えていないから太刀打ちできなかった」これも大切な学びです。
過去問は5〜10年分くらいは何度も繰り返し解き、自分の知識として定着させていきましょう。
コツ4:模試を受ける
行政書士試験で不合格になった人からは、「時間配分を間違えた」「全問解答を意識してしまった」といった声が多くみられます。
なぜこのようなことが本試験で起こるのでしょうか?答えはシンプルです。「緊張」が正常を保てなくさせるからです。「緊張」するから思考が鈍り、合格したい気持ちを全面にプッシュしてきます。それに加えて、迫りくる時間制限+1年に1回しか受けられない試験という事実+足切りの恐怖が複合的に襲ってきます。
合格するためには、冷静になって問題を解くことが大切です。合格はそれを成し遂げた結果として付随してくるものです。
そうならないためにも、まずは『模試』を受けてみることをオススメします。
自分の家で予想問題などを解くこともできるのですが、本番同様の雰囲気のもとで練習ができる模試を受けることが何よりも効果的です。
なぜならば、本試験では、最高のパフォーマンスを発揮するための前提として当日の体調管理・時間管理・解く順番の管理など勉強以外にも整えなければならないことが沢山あるからです。
その他にも、模試を受けることで、知識の足りない箇所も把握することができます。試験後の得点票をみて、他の受験生の得点率が高い問題を落としてしまったのであれば、それは是が非でも覚えなければならない問題と言う事になります。
なお、可能であれば、自校だけでなく「他校の模試」も受けることが出来るとベストです。学校ごとに問題の出題傾向が変わるので、思いのほか実力が発揮できないこともあり、本当の実力がついているかどうかを確認することが可能だからです。
模試は本番に向けた最高の練習でもあり、今の自分の実力(知識面・メンタル面・フィジカル面)を知ることができる良い機会でもあります。
コツ5:資格の学校(予備校)を積極的に活用する
独学で合格を目指すことも不可能ではありません。しかし、行政書士は難関資格なので資格学校に通った場合と比べて時間が、かかってしまう傾向があります。
資格の学校に通うのであれば、行政書士試験の受験生は「社会人や主婦などの日中は忙しい方達」が多いので、通学講座ではなく通信講座を活用して効率よく勉強するのがオススメです。
通学講座はスケジュールが組まれているので学習リズムを組みやすい反面、好きな時にコツコツ勉強するのが厳しいことがあります。
そこで、通学講座です。通信講座は隙間時間を活用して、何回でも講義映像を見直すことができます。また、不明点は、メールで聞くことが出来、仕事終わったあとに確認することもできます。
また、通学の講座よりも費用が抑えられるため、スクールに通うのは金銭的に厳しいという方にも向いています。
行政書士試験は効率よく勉強することができれば短期合格が狙える!
本記事では、行政書士試験の難易度や、勉強時間の目安、最短で合格するためのコツなどについて解説してきました。
行政書士試験は難易度が高く、合格率10%前後の狭き門です。しかし、受験資格はないので初学者もトライしやすく、しっかりと勉強をして知識を身につければ突破することが現実的な資格です。
ただ、800時間前後の勉強時間が必要なので、1年以上勉強を継続しなければいけないことがほとんどです。
大変そうと思いますよね。私も、当時はそう思っていました。大丈夫です。人には「習慣」という性質があります。最初は大変でも学習リズムを作り、組み立てた計画に沿って勉強すれば、あっという間の1年になります。
合格に最短距離に近づくためには資格学校にお世話になることが一番です。
資格合格.comでは各種資格学校のレビューをしているので参考にしてみてください。
この記事は2022年11月の情報に基づきます。
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