行政書士の資格を取得するための行政書士試験は、合格率が毎年10%程度で推移している難関試験です。
行政書士試験の勉強方法には、「資格学校(予備校)に通う方法」と「独学で勉強する方法」がありますが、コストがかからず手軽に始められる点に重きを置く人に人気なのが、『独学』で勉強する方法です。
本記事では、「そもそも行政書士試験に独学で合格することは可能なのか?」という点や、独学に向いている人とそうでない人の特徴、資格学校で講座を受ける場合の注意点について解説します。
行政書士試験に独学で合格することは可能?
まず、「そもそも行政書士試験に独学で合格することは可能なのか?」という疑問についてですが、結論から言えば「独学で合格することは可能」です。
これは、多くのサイトにおいて独学で行政書士試験に合格した方の「体験記や勉強法」などが公開されていることからも分かるとおりです。
これらの体験記や勉強法などを参考にして、独学でチャレンジすることは「十分可能」と思われます。
行政書士試験に独学で合格するのは非常に難しい
ただし、誰でも独学で行政書士試験に合格できるのかというと、必ずしもそうではないということに注意する必要があります。
その理由としては、次の3点が挙げられます。
理由1:法律や条文の理解が難しい
行政書士試験は『法律』に関する出題がメインとなります。
そのため、法律の内容を正しく理解しなければなりません。
しかしながら、法律で用いられている文言が分かりにくかったり条文が抽象的だったりするため、独学でテキストや法律の条文を読んでも、すぐに理解できる人は多くはありません。
このようなことから、独学で学習を始めた人が途中で挫折したり、あれこれと新しいテキストに手を出してしまい、いずれも中途半端になってしまってきちんとした知識が身につかないというケースが往々にして見受けられます。
理由2:非効率な勉強になってしまいがち
行政書士試験は試験科目が多く、法律科目の「憲法」「行政法」「民法」「商法・会社法」「基本法学」の5科目の他に「一般知識」があります。
さらに「行政法」は、「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償法」「地方自治法」に分かれています。
そのため、試験科目ごとの時間配分など「適切な学習計画」を立てて効率的に勉強を進めなければならないのですが、独学の場合はどの科目から手を付けてどのように進めて良いのかが判断できずに非効率な学習になってしまうことがあるのです。
理由3:独学では精度の高い知識を身につけることが難しい
行政書士試験は合格率が毎年10%程度で推移している難関資格試験で、法律に関する幅広い知識が問われる試験です。
前述のように、法律関係の5科目については正確な知識を身につけることが不可欠となりますので、独学による学習では試験問題に正確に解答できるほどの精度の高い知識を身に付けることは、難しいと考えられます。
行政書士試験を独学で突破できる人の特徴とは?
行政書士試験に独学で合格することは難しいながらも不可能ではありません。
では、難しいながらも独学で行政書士試験に合格できる人にはどのような特徴があるのでしょうか。
独学で合格できる人に共通する特徴は主に次の3つです。
特徴1:合格までモチベーションを維持することができる人
独学は、自分のペースで学習を進めることができるという大きなメリットがありますが、通学タイプの資格学校と違って同じ目標を目指す仲間との出会いがなく、悩みを打ち明けたり相談したりする機会が少なくなりがちです。
悩みやスランプを自分の力だけで乗り越えて、合格までモチベーションを維持することができる強い精神力が必要となります。
行政書士試験に合格するまでの受験回数は「平均2回程度」で長い人の場合は「4回」とも言われていますので、このような長い期間にわたってモチベーションを維持できるかどうかが大きく問われます。
特徴2:スケジュール管理をきちんと継続することができる人
行政書士を独学で目指す場合は、自分で「学習計画」を立てなければなりません。
行政書士試験に合格するためには、法律の知識がある人で500~600時間、法律初学者の場合で800~1,000時間の学習時間が必要と言われています。
なので何年計画で合格を目指すのかを決めて、試験日から逆算した日数に1日の学習可能時間を掛けて総学習可能時間を求め、学習時間が確保できるのかを確認する必要があります。
また、政書士試験科目は「憲法」「行政法」「民法」「商法・会社法」「基本法学」「一般知識」など多岐にわたっていますので、優先順位を決めて学習時間の配分を決めなければなりません。
そして、この学習計画に沿って学習を進めていくことになりますが、進捗状況に遅れがあれば適宜修正が必要となりますし、思ったり早めに進んでいるということであれば、前倒しで進めるのかオフの時間にするのか等、考える必要があります。
このように、自分で学習計画を立てて、そのスケジュール管理を継続的に行うことが必要となります。
特徴3:分からないことがあっても自分で調べて解決することができる人
独学の場合は、資格学校の場合と違って講師に質問することができませんので、難しい法律用語が出てきたときや理解できないことがあったときなどには、自分で調べて解決しなければなりません。
また、法改正は毎年対応しなければならないポイントなので、どのような改正があったのかについても自分で調べて正しい情報を得る必要があります。
つまり、分からないことや疑問点などを自分で調べてしっかりと解決できる人は独学に向いているということになります。
行政書士試験に独学で挑戦することに向いていない人の特徴は?
逆に、行政書士試験を独学で受験することに向いていない人には、次のような3つの特徴があります。
特徴1:法律を初めて学ぶ人
独学で行政書士試験に合格した人の多くは、法学部出身者や司法試験などの法律系の資格試験の合格者や経験者などで、ある程度の法律に関する知識が身についている方がほとんどです。
法律を初めて学ぼうとしている人にとっては、テキストや法律の条文を読んだだけでは理解することが難しく、具体的なイメージが湧かないことから理解を深めることは困難だと考えられます。
分からない用語や表現をきちんと理解するために膨大な時間がかかってしまい、学習計画通りに進まなくなって挫折してしまうケースも多く見られます。
特徴2:短期間で合格を目指している人
行政書士試験は試験科目が多く学習範囲が広いため、独学ですべての知識を習得しようとすると非常に効率が悪くなり膨大な時間がかかってしまいます。
そのため、一発合格や1年での合格など短期間での合格を目指す人には独学に向いていないということになるのです。
学生であれば、あえて資格学校に通わずに独学で挑戦してみるというのは後々の大きな財産になるので、やってみる価値はあると思います。
しかし、行政書士試験に挑まれる受験生の殆どは社会人や主婦が多いので、そういった方たちが初学者と言う事であれば資格学校に通われることを間違いなくオススメします。
詳しくは後半で資格学校に通う事のメリット・デメリットをご紹介させて頂きます。
特徴3:資格試験の経験がない人
これまでに何かしらの資格試験を受験した経験がある場合は、試験の内容は違っていても試験当日までの「学習方法」や「スケジュール管理など」について、自分なりの方法が確立されている可能性がありますので、独学で行政書士試験に臨むことができるでしょう。
しかし、このような経験がない場合には、行政書士試験に合格するために必要な知識以外のことも自身で考えなければなりません。また、何かしらの資格試験を経験したからこそ、回り道をしてしまうことの大変さが分かるのではないでしょうか。
できるだけ短期間で合格したい場合は、資格学校(通学・通信)の講座を受講するのがオススメ!
行政書士試験は独学でも合格することは可能ですが、できるだけ短い期間で合格したいのであれば、資格学校で行政書士試験の対策講座を受講するのがオススメです。
資格学校には通学講座と通信講座があり、どちらを選ぶかは住んでいる地域や本人の好みなどによって決めればいいのですが、ポイントは次のような点です。
ポイント1:資格学校が効率の良い学習スケジュールを作成してくれる
通学講座でも通信講座でも、学習スケジュールや講義日程などは「学習カリキュラム」として資格学校側が作成してくれます。
その学習カリキュラムは資格学校による長年の「経験・実績」のもとに作成されたものですから、試験に向けて計画的に学習を進めることが間違いなくできます。
なお、資格学校によってそれぞれ講座にコンセプトがあり、「講座費用・学習期間・学習優先教科」などは異なります。
ポイント2:選りすぐりの教材を提供してくれる
資格学校の学習カリキュラムと「教材」はリンクしています。なので、資格学校の準備してくれたスケジュール・カリキュラムに沿って勉強するだけで合格まで最短距離で進むことができます。
しかし、独学の場合、市販の書籍の中から自身のレベルにあった教材を自身で選ぶ必要があります。勿論、資格学校の講座で使われている教材だけを購入する方法もありますが、学習経験者向けの方法となります。
また、資格学校の学習カリキュラムと「教材」はリンクしているので、資格学校の教材を買ってしまうのであれば、講義も受けてしまった方が効果的だと思います。
なお、資格学校によって「テキストや問題集の質」は異なっています。他にも、モノクロだったり、カラーだったりと違いが見られます。
ポイント3:理解できないことをすぐに質問し、分かりやすく回答してくれる環境がある
通学講座の場合は、週に2回ほど校舎に行き講義を受けますので、分からないことは都度、講師に質問をして直ぐに解決することができます。
通信講座の場合は主にメールなどを利用して質問することになるかもしれませんが、講師に質問して解決することが可能です。
なお、資格学校によって通信講座の制度としてメール等の「質問回数に制限」をかけている場合があります。制限回数は1日と総回数の2つが挙げられます。
初学者の場合は、法律の内容に加えて「学習方法」についての質問もすることが考えられるので質問回数に制限はない方が良いのではないでしょうか。
ポイント4:モチベーションの管理が容易
通学講座の場合は、週2回程、学校に通う事になるので強制的に勉強する習慣を作ることができます。周りにいる方たちは皆、「同じ合格」を目指している方達なので切磋琢磨することが出来ます。
また、通信講座でも毎月、カリキュラムに沿って講義動画が配信され、教材が自宅に郵送されますので良い意味でプレッシャーがあり、勉強する習慣の作成が容易となります。
資格学校(通学・通信)で講座を受ける場合の注意点
お金はかかるものの、独学よりも効率的に合格を目指せる資格学校(通学・通信)ですが、受講にあたっては、いくつか注意点があります。
注意点1:合格できないと次年度の試験に向けて追加費用が必要になる
行政書士試験は、毎年1回、11月の第2日曜日に行われますが、もし合格できなかった場合は次年度の本試験に向けて講座の受講費用が必要になります。
なお、講座によっては、不合格になった場合に次年度の受講費用まで含めたコースが設定されていることもありますので、それを利用するのも一つの方法です。
注意点2:独学と同様にスケジュール管理は必要となる
先ほど、資格学校を選ぶことによるポイント4で言及しましたが、資格学校が「学習の機会」や「モチベーション」は与えてくれますが、それを活かせるかは自分次第です。
なぜならば、通学でも通信でも、学習スケジュールを管理してくれる講師やチューターは基本的にいないので、ここは自身の力でコントロールしなければなりません。
ただ、資格学校によっては、定期的に学習進捗状況のすり合わせを行ってくれるところもありますが、20万円近くの高額講座となります。※通信講座の場合、相場としては8万円前後です。
注意点3:通学講座の場合、通学に時間がかかる校舎は避ける
社会人の受験生の場合、仕事がお休みの日に校舎まで通学をすることとなるので遠いと腰が重くなり、勉強から遠のいてしまう傾向があります。
なのでもし、通学講座を選ぶ場合は、自宅から通いやすく通学時間のかからない校舎を選ばれることをオススメします。
ただ、通学講座でも収録済みの講義を視聴する「映像通学」と言う学習スタイルをもうけている資格学校もありますので、その場合は、会社帰りに校舎によって1コマだけでも見て帰るというやり方もできます。
その場合は、会社の近くで探してみるのも悪くありません。
行政書士は独学で合格することが可能!ただし、法律初学者や学習計画の管理が苦手な人、合格まで最短距離で行きたい人は資格学校を利用するのがオススメ!
本記事では、行政書士試験に独学で合格することは可能ではあるものの非常に難しいということ、独学に向いている人と向いていない人の特徴、及び資格学校で講座を受ける場合の注意点について解説しました。
まとめると、行政書士は独学で合格することが可能ですが、法律初学者や学習計画の管理が苦手な人や合格まで回り道をせずに最短距離で行きたい方は資格学校を利用するのがオススメです。
当サイトでは、大手だけでなく中堅やベンチャーの行政書士試験対策を取り扱っている資格学校を分析している記事がありますが、まずは次の記事で資格学校の選び方について確認しましょう!
この記事は2022年11月の情報に基づきます。
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