行政書士試験は「5肢択一式」の問題が中心ですが、「記述式問題」も3問出題されており、1問20点と配点が高いため、択一式の問題だけではなく記述式問題にも対応できるようにしなければなりません。
また、行政書士試験は6科目から問題が出題され、その範囲は広く、すべてを網羅しようとすると膨大な時間がかかってしまいます。
そこで大切なのは、「要点」を絞って効率的に勉強することです。
今回は、行政書士試験の効率的な勉強法や、試験の傾向から見える5つのポイントを解説します。
行政書士試験の傾向
行政書士試験は巷では難関資格の1つと言われています。
1990年代から難化し始め、難化傾向が明確になったのが2000年と2006年に行われた試験内容の見直しです。
現状2006年以降、難易度の高止まりが続いていると言えるでしょう。
試験は300点満点となっており、180点以上で合格となる「絶対評価」の試験です。
「6割」で受かるということから、一見すると、スムーズに合格できそうな試験に見えますが、合格率は「10%前後」となっています。
引用元:一般財団法人行政書士試験研究センター「試験結果の推移」
配点は法令科目が244点、一般知識が56となっているので、配点の高い法令科目をどれだけ勉強できるかが合格へのカギとなります。
詳細な「合格基準と足切り制度」につきましては、次のページでまとめてありますので、ご確認ください。
勉強時間と開始時期について
行政書士試験合格に必要な勉強時間は予備校などの資格学校を利用した場合、平均で800時間と言われています。
しかし、800時間というのは法律に関する知識が全然ない場合の勉強時間の平均値であり、他の士業資格を保有している場合や大学で学んでいた場合などの法律に関する基礎知識がある場合は500時間〜700時間が合格に必要とされる勉強時間の平均値となります。
また、行政書士試験の勉強を開始する時期は、自分が1日でどの程度勉強時間が確保できるかによって変わってきます。
仮に800時間を勉強時間の目標を設定するとすれば、1日平均2.5時間勉強したとして、かかる期間は「約10ヶ月」です。
行政書士試験は毎年11月頃行われるので、約10ヶ月勉強すると仮定すると、少なくとも「年初め」には勉強を始めなければいけません。
あくまでこれは勉強をスムーズに行った場合を想定し、算出した期間なので、ご自身の状況に合わせて、余裕を持ったスケジュール立てをするのがオススメです。
テキストの選び方について
初学者の場合、いきなり法律の条文を見ても内容が頭にスッと入ってこないと思います。
そこで、自身のレベルに合わせて数冊(1~2)買っていく方法が効果的です。
最初の1冊はフルカラーで、1冊に全試験科目の解説が載っているような本当に簡単なモノがオススメです。
私は、資格学校のテキストを最終的に使用しましたが、本講義に入る前の簡単な予習として全体像をつかみたく、次のような「入門編」を購入しました。
ポイントは熟読をしないことです。最初の段階で勉強が嫌になってしまってはダメなので、パラパラと図や表を楽しみながら勉強します。
なお、2冊目以降は、本試験を見据えて、これは難しいな・・・と思えるモノを購入しましょう。
後は、その難しい・分からないを分かる!に変えていくだけです。
※最終的な本試験対策のテキストに迷った場合は、資格学校の講座で使用している教材のみを買うという裏技もあります。ただ、テキストと講義は連動しているので効率を考えると、講義もセットで購入することをオススメします。
問題集の選び方について
どんなにテキストを読んだり、講義を受けても知識を詰め込んでも試験でその知識を使いこなせなければ意味がありません。
この問題の対策法として、多くの問題を解いて、ちゃんと間違えることが大切です。そうすることで知識の詰め込み方が甘かったことに気が付きます。
その、多くの問題を解くために使用する教材が「問題集」です。
こちらもテキスト同様で、最初は分厚い過去問題集10年分を購入するのではなく、数年分でかまわないので「入門編」を購入しましょう。
ポイントは1冊をしっかりと最後までやりきることが大事です。少し解説の読み込みが甘くてもかまいません。この段階では「達成感」を得ることが大切です。
2冊目以降は、過去10年分の対策をしている、分厚い過去問題集を購入しましょう。この場合、試験年度別に進めていくモノ(①)ではなく、科目ごとに10年分を進めていくモノ(②)の方が科目ごとの理解が深まるので効果的です。
①憲法R3→民法R3→行政法R3→会社法・商法R3→R4憲法・・・
②憲法H24~R3→民法H24~R3→行政法H24~R3・・・
なお、本試験では①の形式で解いていくことになるので、10年分の過去問題集等で実力をつけた後の「模試」で対応できるか実力をチェックしましょう。
行政書士試験の効率的な勉強法とは?
行政書士試験は難易度が高い試験である上に、試験範囲が広いため、一夜漬けでは対応することは出来ません。しかし、時間をかけて「全て覚える」というスタンスでは合格が難しいのが現実です。
なぜならば、「人は忘れる生き物」だからです。そのため、合格するには本人の努力だけではなく勉強方法にもひと工夫が必要になってきます。
試験範囲を網羅するというよりは、試験に合格するための効率的な勉強法を身につける必要があります。
今回紹介する行政書士試験の効率的な勉強法は以下の3つです。
※資格学校を使った場合を想定しています。
- まずは講義を受ける
- テキストで復習をする
- インプットとアウトプットを科目のチャプター(章)ごとに行う
- 同じ問題集を最低でも3周する
それぞれの勉強方法について、具体的なやり方やポイントなどを見ていきましょう。
効率的な勉強方法1:まずは講義を受ける
講義の前に「予習」ができれば望ましいですが、中々、行政書士受験生の方は社会人が多く、時間の確保ができない方が多いと思われます。
なので、「予習」は思いきって捨ててしまいましょう。大事なのは、予習のあとの「復習」です。
講義では、講師の話をしっかりと聞いて、なんとなくで大丈夫なので講義の概要を掴むことを心がけましょう。
そして、気になることがあれば、「メモ」を必ず取ってください。講師の方が、ここは「ポイント」だと解説があると思います。
効率的な勉強方法2:テキストで復習をする
講義で学んだ内容をテキストで「復習」をしましょう。
講義を聞いた分、テキストから勉強を開始するより、なんとなくですが分かる部分があるはずです。
この時に大事なのが、分からないところがあったとしても次に進むのをやめないことです。
分からない部分は、何が分からないのか「メモ」を残して、次に次に進みましょう。
どうしてもわからないところが気になる場合は、「時間」を決めて調べましょう。
なお、先ほどのメモ+調べても分からなかったことは、通学であれば講師に次の講義の合間に質問をします。通信であれば質問メール・TEL等を行い、疑問点をなくしていきます。
それと、行政書士試験は「条文」がそのまま、本試験の内容として出題されます。なので、分かりやすく書かれたテキストを熟読していたとしても見慣れない条文の内容が出題された時に対応できるように、テキストや問題集で触れた条文は、「※六法全書」に蛍光ペンでマークをしてください。
※六法全書は、いろんなものが市販されていますが、内容にそこまでの差はないので、「自分が読みやすい」と思ったものを購入してください。迷った場合は、「行政書士試験用」と記載があるものがオススメです。私は次のものを使いました。
最初は、なんのこっちゃという状態で問題ありません。何度も何度も確認した形跡(ペンの跡)というのは、本試験前の最終確認のときに必ず役立ちます。
効率的な勉強方法3:インプットとアウトプットを科目ごとのチャプターで行う
インプット(講義を受ける・テキストを読む)とアウトプット(問題を解く)を行うのは試験勉強では重要な事ですが、一気に行うのではなく、「一定の間隔(科目ごとのチャプター)」でインプットとアウトプットを交互に行うことが重要です。
なぜならば、最初にインプットした内容は時間の経過とともに忘れていってしまうからです。インプットした内容を一定の間隔でアウトプットすることで、より深く記憶に残すことが可能です。
講義を受ける→テキストを読む→問題を解く→講義を受ける→テキストを読む・・・
シンプルなこの繰り返しを「科目ごとのチャプター」で行うことがポイントです。
効率的な勉強方法4:同じ問題集を最低でも3周する
行政書士の範囲は膨大なため、問題集を一度解いただけでは知識が定着しません。
そこでオススメしたいのが「3周勉強法」です。
3周勉強法とはその名の通り、同じ問題集を3回繰り返し、知識を深めていく勉強法です。
1周目は分からない問題があってもとにかく問題を進めていきます。
分からないと、あれもこれもと調べたくなる気持ちも分かりますが、最低限の確認にとどめて次の問題へと進めてください。
2周目では1周目で間違った問題や分からなかった問題のみを解きます。
3周目では1周目と同じように全部の問題をもう一度解きます。
ただし、3周は最低ラインでしかないので、3周目でも解けない問題や間違った問題が多かった人は4周目、5周目と何度も繰り返していく事が大切です。
こうすることで、一つひとつの問題が自分の体に刷り込まれ、知識として定着していきます。
行政書士試験の傾向から見える合格のための5つのポイント
行政書士試験は300点中180点以上で合格となる絶対評価の試験ですが、合格率は毎年約10%前後と難易度の高い試験でもあります。
そんな行政書士試験の傾向から見えてくる、合格のためのポイントは以下の5つです。
- 民法と行政法は特に重点的に勉強する
- 一般知識は基準点クリアを狙う
- 1つの過去問を最低でも3周する
- 記述問題はとにかく数をこなす
- 隙間時間を利用して条文を頭に叩き込む
それぞれ具体的に解説していきます。
ポイント1:民法と行政法は特に重点的に勉強する
法令科目で出題される問題は全部で46問となっており、そのうち民法と行政法の出題数は33問で188点と配点が大きく、法令科目の8割を占めます。
「民法と行政法」を重点的に勉強することで、合格する可能性が高くなります。
反対に、民法と行政法に弱いまま試験に挑むと、他の科目で点数を獲得できたとしても合格することは難しくなってしまうのです
他の科目も勉強することは大切ですが、民法と行政法の勉強に使う時間を、多く取るよう意識しましょう。
ポイント2:一般知識は基準点クリアを狙う
試験で180点以上取れば合格できるというわけではなく、180点の「うち」一般知識で4割以上点数を獲得していないと不合格になってしまいます。
一般知識は14問出題され、一問4点の配点割合で合格基準は24点以上です。
14問のうち6問正解することで合格基準である24点以上を獲得できるので、民法と行政法をメインに学習を行い、一般知識は基準点クリアを狙う学習を行っていくのが効率的です。
ポイント3:1つの過去問を最低でも3周する
過去問は最低でも1冊につき3周するように心がけましょう。
過去問を繰り返し解くことにより自分の得意・不得意な分野が分かってきます。
3周繰り返すイメージとしては以下の通りです。
- 1周目:問題の出題傾向を理解する
- 2周目:苦手分野の復習や、間違った箇所の修正
- 3周目:苦手分野が改善されているかの確認
1周目から1問ずつ集中したくなる気持ちも分かりますが、まずは問題の傾向などを理解するために分からない問題などは飛ばします。
2周目は1周目で分からなかった問題などを重点的に行い、3周目は最初から過去問を行い知識が定着しているかの確認をします。
ただし、3周は最低ラインになるので、過去問は何度も繰り返し行うことが大切です。
ポイント4:記述問題はとにかく数をこなす
記述問題は行政書士試験の中で最も難易度が高いのが特徴。
出題数は3問と少ないですが配点は1問20点、合計60点とかなり高く設定されています。
ですが、記述問題はある程度合っていれば0点ということはない(必要キーワードが記載されていれば部分点がある)ので、とにかく数をこなして「記述式に慣れること(部分点の取り方を学ぶこと)」が大事です。
対策のコツとしては次の4点を意識して学習しましょう。
- 言葉を間違えない(※瑕疵などの単語をしっかりと覚え、曖昧にしません。)
- 読解力を身につける(※問われていることと的外れな記載は部分点を狙うことすらできません。)
- 関係を図解化する(※図や表を日ごろ書いて問題を解くことで記憶に残りやすく、問題を解く精度も向上します。)
- 5肢択一を、しっかりと読みながら解く(※過去、5肢択一の正解肢の条文が翌年以降の記述式に出題される傾向があります。)
これら4点を意識して学習すれば本番で困ることはありません。
ポイント5:隙間時間を活用して条文を頭に叩き込むor頭の中で自分講義をする
行政書士試験に合格するためには800時間程度の学習時間が必要と言われていますが、800時間を予め確保することは難しいという方がほとんどだと思います。
そこでオススメしたい勉強法が「隙間勉強法」です。
通勤電車やお昼休みなど、5〜10分の隙間時間を勉強時間にあてることで、積み重ねにより大きな学習効果が得られます。
やることとしては、六法を使った条文の確認もオススメですが、昨日学んだ内容を1つピックアップして頭の中で誰かに説明してみるというのが特にオススメです。
誰かに説明できて初めてそのことを「理解」していると言えます。これも立派な復習です。
行政書士試験は試験傾向を押さえて効率的に勉強することが大切!
行政書士試験の傾向や試験に合格するためにおすすめの、効率的な勉強法などを紹介しました。
範囲も膨大で難関資格でもある行政書士試験は、簡単に合格することは難しい試験です。
そのため、試験傾向をしっかりと押さえて、今回紹介した勉強法などを活用して効率的に勉強するよう心がけましょう。
この記事は2022年12月の情報に基づきます。
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