行政書士試験は、合格率が「10%前後」で推移している難関試験です。
弁護士や税理士などの他の士業と同様に独占業務があり、許認可、事実証明及び権利義務関係などの行政書士が取り扱える書類の数は1万点以上にのぼります。
しかし、ネット上で行政書士について検索してみると「やめとけ」「稼げない」などというキーワードが表示されるため、「行政書士を目指してよいものか?」「これだけ長い勉強時間をかけて資格を取るメリットが本当にあるのか?」など、不安に感じている方は多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、行政書士の仕事はやめとけと言われる理由について詳しく解説します。
行政書士の仕事はやめとけと言われる主な理由
「行政書士の仕事はやめとけ」と言われる主な理由として、以下の6つがあげられます。
- 他の士業よりも独占業務が少ない?
- 行政書士の人口が多く、飽和状態になっている?
- 将来AIに仕事を取られると言われている?
- 求人数が少ない?
- 行政書士資格を取得しても年収に直結するわけではない?
- 独立しても事務所を存続させていくのが難しい?
上記の中には、本当のこともあれば、絶対にそうだとは言い切れないものや、自然とマイナスなイメージがついてしまったものもあります。
それぞれの具体的に解説していきます。
理由1:他の士業よりも独占業務が少ない?
行政書士は他の士業と比べて独占業務が少ないと言われるネット上での口コミがあるようですが、決してそんなことはありません。
行政書士の「独占業務」は大まかに分けて以下の3つです。
- 官公署に提出する書類の作成
- 権利業務に関する書類の作成
- 事実証明に関する書類の作成
ただし、上記の業務の中には行政書士にとって「共同法定業務」と考えられるものがあります。
たとえば、「非紛争的な契約書・協議書の作成」は弁護士との共管業務であると解されます。他には、司法警察機関(※司法警察員)あての告訴・告発状づくりも同様に考えられます。
また、細かい解説は割愛させていただきますが上記3つの業務にかかる「代理、相談業務」は「非独占業務」とされ、弁護士法・司法書士法などの他の士業の法律で制限されていない業務を行うことができると考えられます。
つまり、行政書士の仕事は他の士業と行える仕事が重なっているところがあり、こういった事情が行政書士の仕事は「他の士業より独占業務が少ない」と考えられてしまっているのではないでしょうか。
しかし、「官公署に提出する書類の1つに許認可申請書(※運送業・飲食業等の営業許可)」があります。その数は10,000以上、日本にあると言われています。
また、一概にもいいきれませんが弁護士は「訴訟」を専門とし、行政書士は「予防法務」を専門とする考えもありますので、行う仕事が常に重なっているというわけではありません。
理由2:行政書士の人口が多く、飽和状態になっている?
2022年10月現在で行政書士に登録している個人の数は51,000人以上です。
全国で50,000人を超えているので、他の士業と比べても行政書士の人口が多いのは事実です。
また、司法書士は22,000人程度、社労士と弁護士は43,000人程度となっており、行政書士より10,000~30,000人以上少ない人数となっています。
しかし、理由1のところで解説したように「許認可申請書」の数は、10,000以上あると言われていますので自分の得意な分野を見つけていくことで、他の行政書士と差別化することは可能です。
理由3:将来AIに仕事を取られると言われている?
行政書士の仕事の内、単純な書類作成に関しては、将来AIに取られる可能性は高いと言えるでしょう。
実際に、20年後には、現在の行政書士の業務の90%はAIに取られる可能性がある、と言われています。
ですが、行政書士の業務範囲は世の中の動き(法改正を含む)に合わせて常に広がっているので、新興の業務に関してはAIに取られる可能性が低いと言えます。
また、行政書士にとってもAIを上手く活用することにより時間がかかってしまう事務を効率化することができるので悪い点だけは、ありません。
こうして生まれた時間を企業向けの「法務顧問などの相談業務」としてAIに代替されにくい分野へ方向転換させていく対策もできます。
理由4:求人数が少ない?
都内・地方都市であれば、行政書士事務所・行政書士法人が求人を出していることもあるでしょう。また、一般企業でも法務部や総務部で行政書士の知識が活かせる求人もあるでしょう。
しかし、行政書士を初めとする士業は「専門職」であるためにもともと独立向きの資格です。なので、求人が世にあふれているというわけではありません。
もし、スキルがまだおぼつかないと言う事であれば、士業専門の転職サイトなどもあるので、それらを活用して就職や転職をしてみるのも1つの方法です。
仕事が欲しいから行政書士をとるのではなく、やりたい仕事があって、それが行政書士としてできると言う考え方であれば、取得後に迷うことはないと思われます。
理由5:行政書士資格を取得しても年収に直結するわけではない?
行政書士の年収は人によって個人差があります。
平均年収は、独立した方で500万円と言われており、中には1,000万円以上稼ぐ方もいます。
ですが、その一方で年収が300万円以下の行政書士もいるので、平均500万円というのはあまり参考になりません。
年収差の要因は、色々あると思いますが1つに「営業力の差」があります。
なぜならば資格を取得すれば、行政が定期的に仕事を発注してくれるわけではないからです。なので、資格を取得して終わりではなく、高収入を得るために、努力や工夫をすることが重要となってきます。
理由6:独立しても事務所を存続させていくのが難しい?
独立してすぐに食べていける方は士業でなくとも多くはないでしょう。
しかし、士業には「独占業務」があるので、看板をだせばお客様からの連絡が絶えないようになると思われがちです。
資格を取得したとしても行政が定期的に仕事を発注してくれるわけではありませんので要注意です。なので貯金があまりない状態で勢いで独立した場合、廃業する確率は高くなります。
事務所の経営が軌道にのるまでには「3年かかる」と言われています。なので3年間は暮らせるくらい貯金を作り、開業前に事業計画をしっかりと立てることが重要となります。
勿論、事業は計画どおりには行きませんが、少なくとも収支を明確化させるためにも事業計画書を作っておきましょう。
それと、独立してから食べていけるためには「営業力」も大事です。営業力には、人柄やスキルも重要となります。
どういう方法で仕事を確保していくのか、開業前に練っておく必要があります。
行政書士の仕事をするメリットはある?
行政書士の仕事をするメリットは大きく分けて以下の4つです。
- 難関資格に合格したこと自体が評価に繋がる
- 未経験でも独立開業できる
- お客様の「困った」に寄り添うことができる
- コツコツと高収入を目指せる
- ダブルライセンスを取得すれば年収アップが狙える
それぞれのメリットについて具体的に解説していきます。
メリット1:難関試験に合格したこと自体が評価に繋がる
行政書士試験は合格率が10%前後とかなり低いので、しっかりと勉強をして挑まないと合格することができない難関資格です。
そのため、行政書士の資格を取得したということが、「法律に抵抗感がない」という証明になります。また、「1つのことをコツコツできる」という証明にもなります。
行政書士だけでなく他の士業でも試験に合格した=実務ができると言うわけではありません。しかし、受験期に勉強したことや乗り越えた壁は、いつか必ずあなたを守ってくれます。
メリット2:未経験でも独立開業できる
行政書士は資格取得後、実務経験がなくても資格取得後に独立開業することが可能となっていることが大きなメリットです。
たとえば、社会保険労務士は開業するためには実務経験が2年必要なので、そういった士業と比べると行政書士は資金と事務所さえ用意できれば開業することができるので、比較的、独立がしやすい士業と言えるでしょう。
独立開業の良いところとしては、自分の判断で仕事を進めることができる点があります。なので決断は、自分がするので仕事を早く進めることが可能です。また、体調に合わせて仕事を調整できるので平日に休みをつくることも、がむしゃらに働くことも可能です。
また、会社のように人事考課で給与(収入)が決まるわけではないので、性格によっては独立向きの方がいるのも事実です。
メリット3:お客様の「困った」に寄り添うことができる
行政書士は、「街の法律家」というキャッチフレーズがあります。生きていれば様々なトラブルが発生することがあります。それは、生活・労働どちらもでも起こることです。
トラブルの程度にも大小があり、誰しもが訴訟での解決を望んでいるわけではありません。そんな時こそ、行政書士の出番です。
色んなトラブルの入り口として行政書士が新身になり、自身で解決出来ない業務は他の士業の力を借りてお客に寄り添えばいいのではないでしょうか。
皆さんも、身近な人が困っているときにもし自分が法律に詳しかったら・・・。と思ったことはないでしょうか。行政書士のスキルは、あなたも身近な人も助けてくれます。
メリット4:コツコツと高収入を目指せる
行政書士はコツコツと高収入を目指すことのできる士業です。
行政書士だけでなく士業の仕事は専門的なことなので最初は全くできず苦しい時期があります。売上に対して時間がかかりすぎてしまう、いわゆる赤字というものです。しかし、そこで諦めずトライを繰り返してことで、その業務の経験が積み重なっていきます。積み重なった経験は他の経験と結びついていきます。
このように自分ができることが磨かれていくほど、業務は効率化していき費用対効果は上がっていきます。さらに結びついた経験は付加価値としてお客様に幅広い提案をすることができます。
このような好循環のループに入るとお客様にお客様をご紹介していただけることがあります。
その中で、さらに専門性も磨いていくことで他の行政書士と比べて差別化することも可能です。
ここまで突き抜ければガンガン営業を行っていきましょう。
どんどん、自分にしかできないような業務や提案を増やしていくことで、時間はかかってしまいますが、着実に売上を伸ばしていくことができます。
メリット5:ダブルライセンスを取得すれば年収アップが狙える
行政書士の資格の活かし方は無限大です。
たとえば、「税理士」であれば開業前の経営相談から営業許可の取得まで一括して対応できます。
また、「司法書士」であれば法人の設立から登記の申請まで一括して対応できます。
他にも「社会保険労務士」であれば、外国人の入管業務からその後の労務管理まで一括して対応できます。
このようにダブルライセンスを取得することで「業務の幅」を広げることができるので年収UPを狙うことも可能です。また、お客様側からしても、窓口が一本化されより強い信頼関係を築くことができるでしょう。
行政書士は独立開業や将来性などの面で不安はあるが、やり方次第で高収入を目指せる仕事!
今回は「行政書士の仕事はやめとけ」と言われる理由を紹介しました。
やめとけと言われる理由の中には、真実のものもあれば、努力次第で変えられるものもあるので、一概にやめた方がいいとも言い切れません。
なお、行政書士は独立開業や将来性などの面での不安があるのも事実ですが、着実に努力をすることで高収入を目指すことができます。
1つの事をコツコツと極めるのが好きな人にとって行政書士を初めとする士業の仕事は、きっと向いているでしょう。
※本記事の内容は2023年1月時点の情報に基づきます。
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